【マレーシア:知的財産公社がZoom Kartun 2019を開催】

2019年3月9日に、マレーシア知的財産公社(MyIPO)はマレーシアアニメーションソサエティ(ANIMAS)、Summit Subang USJ、Red Circle Sdn Bhdと共にZoom Kartun 2019を開催した。
MyIPOは著作権漫画ポスターコンペティションの開催及び著作権に関する説明会の実施のために参加した。この説明会は、漫画家の中で著作権保護に対する理解度を上げることを目的として実施された。
著作権漫画ポスターコンペティションには合計30人が参加した。コンペティションでの彼らの作品は、特にアーティストの中での著作権に対する意識を引き上げるため公共の場に掲示される予定である。

【タイ:労働者により開発された知的財産の取り扱い】

例えば商標、著作、意匠、発明、企業秘密などの知的財産(知財)は多くの企業にとって非常に貴重な資産である。それは市場における優位性及び他企業との差別化をもたらす。そのため、会社の管理者が自社のIPポートフォリオを正しく認識して管理することが重要である。
企業の知的財産は一般的に労働者によって開発又は発明されるので、賢明な企業はそのような知財が企業に属することを明確にするために必要な契約を労働者と交わすべきである。それを怠った場合は大きな問題に繫がることもある。例えば、企業が第三者に対して知的財産権を主張することができない可能性があり又は勤務時間内に同社において開発又は発明した労働者との間に問題が起きる場合もある。
タイでは、労働者により開発又は発明された知的財産の所有権は各々の知的財産関連法により異なった規定がなされている。契約書が関連する全ての問題に適切に対処し、全ての関連法に準拠していることを確認するため、経営者はその違いを理解する必要がある。
◆著作物の所有権
絵画、写真、コンピュータソフトウェアなどの著作物について、使用者と労働者の間で書面による特段の合意がなされていない場合、著作権法は著作物の所有権を開発又は発明した労働者に与えている。著作物が労働者に属している場合、使用者は事前に雇用契約に定められた当該著作物の頒布のみを認められる。一方、企業が著作物を創出するために第三者を雇用した場合、再び他の同意を交わさない限り当該著作権は使用者に属する
◆企業秘密の所有権
企業活動に有用な、誰にも知られていないノウハウ又は生産工程などの企業秘密について、営業秘密法は企業秘密としての保護に値する営業情報を発見、発明、編集又は作成した者を当該秘密の保持者と見做すことを規定している。しかしながら、雇用関係内における企業秘密の創出については具体的には取り上げられていない。したがって、両当事者が特段の合意をしない限り、労働者が所有者であると見做される可能性がある。
◆商標の所有権
同様に、労働者による商標又はブランド名の創作について、商標法では特に定められていない。それゆえ、使用者及び労働者間に特段の定めがない場合、当該商標又はブランド名を創作した労働者が所有者であると主張することもできる。
◆特許の所有権
新型コンピュータ、新しい食品保存方法などの発明及び製品の形状などの設計について、当該労働者との雇用契約に特段の定めがない限り、特許法は労働者が勤務の範囲内で開発した発明又は設計について特許を受ける権利を使用者に与えている。たとえ雇用契約書が発明や設計の問題に言及していなくても、労働者が自らの職務を通じて入手可能になった手段や情報を使って発明や設計を創出したならばこの規定が適用される。
このような場合、労働者が特許受ける権利を得られなくても、当該労働者には発明者または創作者となる権利は依然ある。使用者が当該発明又は設計から恩恵を受ける場合、労働者が通常の収入に加えて特別な報酬を得る権利もある。特別報酬に関するこの権利は雇用契約で削除することはできない。
◆知的財産所有契約
要約すると、著作物、企業秘密、商標が企業に所属する労働者により創出された場合、書面による特段の合意がない場合、所有権は自動的に労働者に帰属することになる。そのため、労働者が創出した知的財産の所有権について、企業及び労働者の間でなされた合意を明らかにすることが非常に重要である。
知的財産の所有権を雇用契約で扱うべきか又は別の契約で定めるべきかを理解していない企業もある。特許法は「雇用契約」に特段の定めがない限り、労働者の発明に対して特許を申請する権利は使用者に帰属すると明確に規定している。しかし、その他の知的財産法はこの問題に関して「合意」のみを要件としているため、労働者が創出した他の知的財産については互いの合意のみで対処することができる。使用者は、労働者が創出した全種類の知的財産について、統一した規定を雇用契約に含めることを検討するべきである。
加えて、雇用の場合、商標法及び営業秘密法は第三者によって創出又は発明されたものの所有権が自動的に会社に帰属することを明確に規定していない。したがって、雇用契約でも同様の知的財産所有権規定を明確に扱うことが推奨される。
◆知的財産の保護及び発展
特許法が設計や発明を行った労働者に特別な報酬を与える唯一の知的財産法ではあるが、企業は著作物、商標及び企業秘密を創出した労働者に同様の報酬を自由に与えることができる。これは確かに労働者による設計、発明及びその他の知的財産創出奨励の一助となり、長期的には企業に利益をもたらす結果となる。企業の経営陣はまた、労働者が勤務過程で創出又は創作した成果物に関する彼らの権利及び義務について充分な認識を持つべきである。
労働者との間で知的財産所有権契約を結んだことがない企業にとって、今こそ向き合うべきときである。創出された知的財産所有権についての取り決めに加え、労働者が既に勤務を開始した後になされた合意においても、創出された全ての著作物、企業秘密及び商標の所有権を包含すべきだ。また、所有権の譲渡は両当事者により署名されなければならない。
新規採用をする企業は長期的な利益の保護に必要となる全てのものが含まれているか否かという観点で雇用契約書を見直すべきだ。使用者は労働者に対して明確且つ公正でありながら、慎重な管理と先見性で貴重な知的財産を守ることができる。

【マレーシア:未承認サイトの取締】

マレーシアンコミュニケーション・マルチメディア委員会(MCMC)は、著作権法及び知的財産権法に違反する内容を提供する違法ストリームサイトのドメインをブロックし、アンドロイドユーザーがアクセスできないようにしている。
著作権法及び知的財産権法の侵害に関する法的管轄権が無いため、MCMCは国内取引・消費者省への苦情及びドメイン、URL等の詳細の提供に基づいてサイトのブロックを実施することができるという。
市場で販売されているアンドロイドデバイスの多くは違法である。全てのアンドロイドデバイスはマレーシア標準工業研究所(SIRIM)の承認を得る必要があるが、SIRIMによって認定されているデバイスはごくわずかで、多くが違法に持ち込まれ販売されている。
SIRIMは、MCMCによりアンドロイドデバイスの使用を試験及び承認するための認定規制機関として選定された。
MCMCは市場での違法デバイスの販売の監視を強化しており、著作権法及び知的財産権法を侵害する違法コンテンツのストリーミングを促進する違法デバイスを阻止するため行動する。
違法デバイスの流通業者及び販売業者は最高100,000RMの罰金又は6か月の懲役、若しくはその双方が通信及びマルチメディア(技術標準)規制に基づき科せられる。

【フィリピン:知的財産権局、国家知的財産委員会によって偽造品や海賊版の取り締まりを強化】

政府の規制当局が禁制品の取引を撲滅するため、フィリピン知的財産権局(IPOPHL)は国家知的財産委員会(NCIPR)が偽造品や海賊版のオンライン販売及び流通を取り締まるように位置づける見込みだ。
これは、法執行者と検察官に向けて開催された2日間のワークショップと共にNCIPRの創立11周年を祝うため6月21日にセブで行われた会議の中心的議題であった。
「フィリピン知的財産権局(IPOPHL)は技術の進歩と革新を保護しているが、悪意を持った業者の中には技術の恩恵を広く一般に害を及ぼすものとして使用している者がいるという現実に真剣に向き合う必要がある。偽造品や海賊版のオンラインでの拡散は以前から問題となってきた。これに対処するには、政府機関が団結する必要がある」と、IPOPHLのJosephine R. Santiago事務局長は述べた。
「オンラインで販売される健康製品を禁止するために食品医薬品局(FDA)によって取られた措置を鑑み、我々も同様にオンライン仲介者との対話を積極的に模索するように奮起を促された」と、IPOPHLのTeodoro C. Pascua副局長は述べた。
この目的のために、IPOPHLは、デジタルメディアを通じた著作権侵害を含む知的財産権を侵害する商品やサービスの購入及び販売を目的としたオンライン機能の使用に対してより厳しく対処するために目指すところを明らかにし、加盟機関との調整を行う。
IPOPHLは、特に消費者問題と電子商取引の両方を対象とする貿易産業省とのパートナーシップを狙った、オンライン販売に対するキャンペーンを実施するには、協調的なアプローチが重要であると強調した。
1月から4月にかけて、提出され検証されたデータに基づいて、NCIPRは6億6,330万ペソの偽造品及び海賊版を押収し、前年同期の65億ペソから89%減少した。
製品の種類別では、65%を医薬品及びパーソナルケア製品が占め、ハンドバッグ及び財布が11%、時計及び宝石類は10.3%、衣料品及びアクセサリー類は4.2%を占めている。
Intellectual property Office of the Philippinesサイト 2019.06.20付記事参照

【ASEAN:ASEAN諸国の知的財産事務所が地域商標制度に焦点を当てた会議を開催】

バンコクで2日間に亘りASEAN諸国の知的財産事務所が開催した会議で地域商標登録制度が議題のトップとなった。
参加者はEUが資金提供するARISE + IPRのプログラムによって実施される実現可能性調査の範囲について議論した。これは国内商標制度について、法的基盤、運営体制、料金体系、利害関係者の利益、国内商標制度への影響などの側面を考慮するものだ。ARISE + IPRは、今やIP集約型産業が東南アジアの経済成長の中心になっているとした。知的財産権保護は、イノベーションやアイデア、ビジネスの商業的価値を保護することと同義である。
知的財産権を強化しようとするASEAN全体の方針と制度は、ASEAN全体の国内外の事業を支援することになるだろう。
地域商標制度は、ASEAN加盟10ヶ国全てにおいて登録までの期間を短縮し、手続きをより確実にし、最終的には地域での事業運営のしやすさを向上させ、新規投資を促進する。
現在、企業はASEAN諸国毎に個別の商標出願を提出するか又はマドリッドプロトコル加盟国に対しては国際出願を検討することが求められている。地域商標制度は、EU及びフランス語圏のアフリカ諸国で既に機能している。
ARISE + IPRのプログラムリーダーであるIgnacio de Medrano Caballero氏は同会議について「ASEANにおける地域統合の道筋とIPシステムの収束、そしてその結果としての経済的利益への大きな前進だ」と述べた。
その他喫緊の課題としてASEAN商標審査ガイドラインの更新及びASEAN知的財産アカデミーの設立が含まれていた。
地域商標制度に関する実現可能性調査は、ASEAN諸国における知的財産規制の地域統合を促進するため、EUの資金によるARISE + IPRによって実施されている一連の5年間の活動の1つである。
ARISE + IPRプログラムは、5年間で550万ユーロを投じ、知的財産(IP)協力を通じて地域統合を支援し、知的財産制度の向上を目的としている。
The Nation 2019年2月18日付記事参照

【ミャンマー:商標法及び意匠法が制定される】

ミャンマーには1914年のビルマ著作権法以外に商標法などの知財に関する法律がなく、外国人投資家にとってミャンマーにおける知的財産権の保護は不十分であった。

しかし現在、教育・科学・技術省がミャンマー連邦法務長官府及び他の省庁と協力して4つの知財法案(商標法、工業意匠法、特許法、著作権法)を起草しており、2019年1月30日、議会は商標法及び意匠法の2つを法律として可決した。

しかし、同法律はミャンマーの大統領が通達により施行日を決めると規定されており、現時点では施行されておらず、予定日も未定である。

商標法は従来の先使用権ではなく、先願主義で実施される。知的財産所有者協会によると、ミャンマーには現在60,000件の商標が登録されているが、商標法施行後には、登記法に基づき登記済の商業商標所有者においても、商標法に基づき改めて出願する必要がある。

【マレーシア:新たな商標のフロンティア】

マレーシアは、1989年6月27日に承認された標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書(マドプロ)への加盟手続きを行っている。マレーシアは同議定書に加盟していないアセアン加盟国2ヶ国の内の1ヶ国であり、今回の加盟はアセアン知的財産権活動計画2011?2015年へのマレーシアの誓約に連なる戦略的動きである。マドプロへの加盟に基づく2019年商標法案では、音、匂い、色及びホログラムのような非伝統的商標の保護、マレーシアにおける実体審査期間12?13ヶ月を9ヶ月以内へ変更すること、調停による異議申立手続の処理等の規定が期待される。
現在アセアン加盟国の中で同議定書に加盟している国はブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、フィリピン、シンガポール、タイ及びベトナムの8カ国である。

参照:2019年3月2日付New Sunday Times
https://www.nst.com.my/…/2…/03/465405/new-trademark-frontier

~TPP11に伴う日本の著作権法改正④~

TPP11に伴う日本の著作権法改正?TPP11に伴う日本の著作権法改正?TPP11に伴う日本の著作権法改正?に続く、最終回の今回は海賊版対策の一方、利活用の視点も重要であることにフォーカスして述べていきます。

著作権法の改正には、大きく2つの流れがあります。1つは著作権を強化するものであり、今回の改正や海賊版対策などがその一例です。もう1つは著作権を制限し、利用促進を図るものであり、2019年1月1日に施行された「権利制限規定の拡充」などがそれにあたります。

海賊版対策については、18年にサイトブロッキングの導入が議論されましたが、「通信の秘密」が侵害されるなどの強い反対意見もあり、立法化には至っていません。また、静止画ダウンロードの違法化については、違法化の対象が「海賊版」から「著作物全般」のダウンロードに拡大され、専門家や世論の反対も強まったことから、見直し協議がなされています。「アクセス警告方式」についても、懸念が示されています。

方法論についての検討は必要ですが、海賊版のように違法性が高い行為に対しては、規制強化が必要でしょう。さもなくばコンテンツの作り手が減少し、ひいては利用者もコンテンツを享受できなくなるといった悪循環が生じ得るからです。

一方、著作物の利活用の観点からは、権利処理を容易にし、あるいは、権利処理が必要な場面を限定していくことも必要です。著作権を強化していくことには弊害もあり、今後は、こうした利活用の視点がより重要となっていくことでしょう。両者のバランスを保てるような取り組みが望まれるところです。

~TPP11に伴う日本の著作権法改正③~

TPP11に伴う日本の著作権法改正?TPP11に伴う日本の著作権法改正?に続き、法改正による権利処理難化という副作用について以下に述べます。

保護期間の延長に伴う影響の一例としてインターネットの電子図書館、青空文庫が挙げられます。同文庫では、1万1000点を超えるPD作品を電子化し、無償提供しています。専用アプリのほか、電子書籍リーダーでも閲覧できます。2019年1月にPD化予定の作品の公開準備を進めていたようですが、今回の改正により、公開が20年先延ばしとなった作品も少なくありません。読者が作品を無償で閲覧できないばかりか、二次利用にも影響が及び得る事態となっています。

一方、日本が保有する様々なコンテンツの横断検索ポータルとして、ジャパンサーチの開発が進められています。正式公開は2020年の予定ですが、現在のベータ版でも約79万点のコンテンツの横断検索が可能です。権利処理が容易となれば、さらなるコンテンツの拡充も期待できるでしょう。

保護期間の延長や一部親告罪化といった著作権の延長・強化により、一部の著作物については、著作権者の収益増加が期待できることは言うまでもありません。しかし一方で、保護期間の延長により、無許諾で利用できる著作物は相対的に減少します。そればかりか、孤児著作物の増加とそれに伴う権利処理の難化という副作用も懸念されています。

時間の経過とともに、著作権者やその所在が不明な作品は増加する上、著作権者の死亡によって相続人に権利が分散するなど、権利関係も複雑化していきます。許諾を得るために著作権者の連絡先の調査、連絡・交渉なども必要となるでしょう。 著作物は利用されてこそ意味があります。利用されない著作物は消えゆく運命であり、著作者もそれは望んでいないはず。権利を守る傍ら、著作物の利活用を図るため、権利処理を容易にする仕組み作りもまた必要ではないでしょうか。

~TPP11に伴う日本の著作権法改正②~

前回の?TPP11に伴う日本の著作権法改正??で述べた改正点において、懸念が特に強かった点につき以下に補足します。

保護期間の延長

保護期間の延長についての改正は、施行時点(2018年12月30日)において保護期間満了前の著作物などを対象としています。例えば2018年には山本周五郎の作品がパブリック・ドメイン(PD)となりましたが、著作権は復活しません。一方、2019年には藤田嗣治、21年には三島由紀夫の各作品のPD化が予定されていましたが、これらの作品のPD化は20年先延ばしとなりました。

また米国、カナダ、オーストラリアなどとの関係では、著作権の保護期間は最長で、3794日(約10年5カ月)加算され、著作者の死後約80年5カ月までとなります。これは「戦時加算」(第2次大戦の戦勝国の著作物について、大戦中の著作権者の利益回復のため、戦時期間を著作権の保護期間に加算する制度)によるものです。日本ではTPPの交渉中、「保護期間の延長は、戦時加算の撤廃を条件とすべき」との意見もありました。しかし、戦時加算はサンフランシスコ平和条約上の義務であることから撤廃は容易ではありませんでした。

著作権等侵害罪の一部非親告罪化

著作権等侵害罪の一部非親告罪化については、刑事罰を恐れて二次創作が萎縮するといった懸念が寄せられ、その結果として二次創作やパロディは非親告罪化の対象外とされました。ただ、これらは適法化されたわけではなく、従来どおり親告罪とされています。

日本では従来、二次創作やパロディについては、著作権者が黙認(見て見ぬふり)してきましたが、刑事告訴が行われ、刑事手続の対象とされるリスクは依然残されています。