TPP11に伴う日本の著作権法改正?TPP11に伴う日本の著作権法改正?に続き、法改正による権利処理難化という副作用について以下に述べます。

保護期間の延長に伴う影響の一例としてインターネットの電子図書館、青空文庫が挙げられます。同文庫では、1万1000点を超えるPD作品を電子化し、無償提供しています。専用アプリのほか、電子書籍リーダーでも閲覧できます。2019年1月にPD化予定の作品の公開準備を進めていたようですが、今回の改正により、公開が20年先延ばしとなった作品も少なくありません。読者が作品を無償で閲覧できないばかりか、二次利用にも影響が及び得る事態となっています。

一方、日本が保有する様々なコンテンツの横断検索ポータルとして、ジャパンサーチの開発が進められています。正式公開は2020年の予定ですが、現在のベータ版でも約79万点のコンテンツの横断検索が可能です。権利処理が容易となれば、さらなるコンテンツの拡充も期待できるでしょう。

保護期間の延長や一部親告罪化といった著作権の延長・強化により、一部の著作物については、著作権者の収益増加が期待できることは言うまでもありません。しかし一方で、保護期間の延長により、無許諾で利用できる著作物は相対的に減少します。そればかりか、孤児著作物の増加とそれに伴う権利処理の難化という副作用も懸念されています。

時間の経過とともに、著作権者やその所在が不明な作品は増加する上、著作権者の死亡によって相続人に権利が分散するなど、権利関係も複雑化していきます。許諾を得るために著作権者の連絡先の調査、連絡・交渉なども必要となるでしょう。 著作物は利用されてこそ意味があります。利用されない著作物は消えゆく運命であり、著作者もそれは望んでいないはず。権利を守る傍ら、著作物の利活用を図るため、権利処理を容易にする仕組み作りもまた必要ではないでしょうか。

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