前回の?TPP11に伴う日本の著作権法改正??で述べた改正点において、懸念が特に強かった点につき以下に補足します。
保護期間の延長
保護期間の延長についての改正は、施行時点(2018年12月30日)において保護期間満了前の著作物などを対象としています。例えば2018年には山本周五郎の作品がパブリック・ドメイン(PD)となりましたが、著作権は復活しません。一方、2019年には藤田嗣治、21年には三島由紀夫の各作品のPD化が予定されていましたが、これらの作品のPD化は20年先延ばしとなりました。
また米国、カナダ、オーストラリアなどとの関係では、著作権の保護期間は最長で、3794日(約10年5カ月)加算され、著作者の死後約80年5カ月までとなります。これは「戦時加算」(第2次大戦の戦勝国の著作物について、大戦中の著作権者の利益回復のため、戦時期間を著作権の保護期間に加算する制度)によるものです。日本ではTPPの交渉中、「保護期間の延長は、戦時加算の撤廃を条件とすべき」との意見もありました。しかし、戦時加算はサンフランシスコ平和条約上の義務であることから撤廃は容易ではありませんでした。
著作権等侵害罪の一部非親告罪化
著作権等侵害罪の一部非親告罪化については、刑事罰を恐れて二次創作が萎縮するといった懸念が寄せられ、その結果として二次創作やパロディは非親告罪化の対象外とされました。ただ、これらは適法化されたわけではなく、従来どおり親告罪とされています。
日本では従来、二次創作やパロディについては、著作権者が黙認(見て見ぬふり)してきましたが、刑事告訴が行われ、刑事手続の対象とされるリスクは依然残されています。