【タイ:バンコクで458点の偽造品が押収される】
2019年6月10日から16日の間、タイ知的財産局(DIP)及び経済犯罪抑制部の職員並びに海外ブランドの代表がバンコクの各地域を視察した。
プラトゥーナム市場では、グッチ、シャネル、バレンシアガ、ルイヴィトン、イブサンローランを含む145点の偽造品を押収し、容疑者を逮捕した。
スクンビット地区では、ルイヴィトン、ディオール、シャネル、エルメス、フェンディ、イブサンローラン、プラダ、ブルガリ、カルチェを含むブランド品のイヤリング、ブレスレッド及びハンドバッグの偽造商品235点を押収した。
シーコンスクエアモールでは、エルメス及びルイヴィトンのハンドバッグ、時計、ブレスレッド、キーホルダー、ベルトなど78点の偽造品を押収し、2人の容疑者を逮捕した。
(タイ知的財産権局Webサイト 2019年6月26日付記事参照)
【ベトナム:改正知財法が11月より施行】
2019年7月4日、大統領はハノイで記者会見を開き、第14回国会の第7回会合で採択されたつの7法律の公布に関する大統領命令を発表した。
その7つの法律のうちには知的財産法も含まれており、多数の条項の改正及び補足に関する法律が2019年11月1日から施行される予定だ。
今回の改正は発明、地理的表示、商標及び知的財産保護に焦点を当てているという。
(Viet Nam News 2019年7月5日付記事参照)
【マレーシア:あなたは知的財産権という宝の山を持つことができるかもしれず、またそれを理解していないかもしれない】
多くのマレーシア人は生活費の上昇を受け、収入を補うため仕事を掛け持ちしたり、些細な商取引を行うようになった。
最近の声明で国内取引・消費者省(KPDNHEP)管轄下機関のマレーシア知的財産公社(MyIPO)は、典型的な低中所得世帯(B40からM40)は給料で生活費を賄うことが難しいため、生活費の上昇への対処に苦しんでいることを明らかにした。
短期的な修正が多く提案されているが、マレーシア人は法律の下保護された「知的財産権」として認識される可能性がある無形資産を所有する可能性があることを認識しなければならない。
さらに、著作権で保護される可能性がある無形資産は、巨大な経済機会を得る可能性も秘めている。
無形資産とは何か?
利用可能で著作権の対象となる資産は、自作の詩や歌などの音楽的なもの、絵画や文章などの視覚的創作物など多岐にわたる。
何世代にもわたって受け継がれてきた家庭のレシピや調理方法も知的財産権(企業秘密として知られる)として考えられ、ファッションやクラフトデザインは意匠として保護される。
知的財産権法の枠組内であるこれら無形資産の利用は、確実に保護され価値を高めることになる。
フリーライダーや侵害者からの追跡を逃れるための安全装備メカニズムとして知的財産権法は機能し、富を生み出すことができる商業的財産としての利用を可能にする。
マレーシアの国内取引・消費者省(MyIPOを通じて)と関連省庁は知的財産権の認識、開発、保護、商品化を支援するためのイニシアチブを講じている。そのため小さな創造や知的財産権の革新性、価値、独自性について考えることがまずは重要であり、商業的に利用可能な資産の可能性があるとして評価することが重要である。
(STRAITS TIMES 2019年4月29日付記事参照)
【フィリピン:若者が知的財産を学ぶ機会としてサマースクールを開催】
フィリピン知的財産権局(IPOPHL)は世界知的財産所有権機関(WIPO)と知的財産に関するサマースクールを共催する。これはフィリピン初の試みであり、首都マニラにおいて2019年9月2日から13日までのおよそ2週間開催される。WIPO及びIPOPHLのリソース担当者や知的財産分野において著名な外部専門家による講演、知的財産に関するケーススタディ及びグループディスカッションなど多彩なプログラムが準備されている。
本プログラムは知的財産について若い世代の理解が深まることを目指し、あらゆる学問分野の大学院生、大学研究科生及び若い専門家を対象としている。
(IPOPHL 2019年7月3日付記事参照)
【タイ:音楽業界の著作権侵害の根絶にブロックチェーン技術を】
デジタルストリーミング社会の到来により、誰もが音楽を自身のスマートフォンなどに気軽にダウンロードして楽しめるようになった。しかし、容易になったからこそ海賊行為も増加している。また、権利関係の複雑さから楽曲制作者等に対して充分な報酬が支払われない場合も多々ある。タイではこれらの問題に対処するため、新しい技術であるブロックチェーン(分散型台帳)に注目が集まっている。
ブロックチェーン技術において、音楽愛好家は少額の手数料のみで楽曲を直接ダウンロードすることができ、その収益は楽曲制作者等に直接もたらされる。この新技術を取り入れることで楽曲購入以外にも徴収、分配履歴など改ざんが困難な形で一連の処理を最初から記録することが可能になる。
ブロックチェーン技術の使用により、楽曲制作者等はレコード会社などの仲介者を通すことなく楽曲を配信できるようになる。そしてその楽曲には固有の番号が付与され、スマートコントラクトが適用される。その後、スマートコントラクトはインターネット上で検索を実行し、曲の違法な複製を検出し著作権侵害行為を直接排除する。
以上のように、「音楽業界における著作権侵害の根絶」がブロックチェーン技術によって実現可能になると目され、全ての楽曲制作者等が正当な報酬を受け取れるようになるための特効薬になり得ると期待されている。
(Bangkok Post 2019年1月22日付記事参照)
【ベトナム:12年間の訴訟の末、ベトナムで最も長く続いている漫画の登場人物の著作権を作者が獲得】
2019年2月18日、ホーチミン裁判所は、子供向け漫画の4人の登場人物に対する知的財産権をその作者のみに認めるという画期的な判決を下し、12年間注目されてきた訴訟を終結させた。
訴訟は、ベトナムの子どもたちを魅了してきた「Than Dong Dat Viet」シリーズの4人の登場人物に対する作者Le Linh氏の権利を争点としてきた。
2002年に初めて出版された同漫画は、ベトナムで最も長く続いている漫画シリーズと考えられており、判決当時は226巻まで出版されていた。
2007年4月、漫画家Le Linh氏が「Than Dong Dat Viet」の共同制作者Phan Thi氏に対する訴訟を起こし、自身が漫画の登場人物の唯一の創作者として認められるよう求めた。また、2005年以降に共同制作関係を解消した後も、Phan Thi My Hanh氏が別の漫画家に登場人物を描かせコミックを新たに出版し、知的財産権を侵害したとして非難した。
Phan Thi My Hanh氏は自分の頭の中で既に視覚化及び概念化した登場人物をLe Linh氏との共同作業内で具体化しただけだと主張した。
しかし、裁判所はこの訴訟について、Le Linh氏が漫画の登場人物の唯一の創作者であり、Phan Thi My Hanh氏は共同創作者にすぎず、Le Linh氏の同意なしにキャラクターを描いたり修正したりすることで同氏の権利を侵害したとの判決を下した。
判決によると、Phan Thi My Hanh氏が役員を務める出版社はLe Linh氏によって作成された登場人物を使用した新しい作品の制作を中止し、訴訟に関連するLe Linh氏の弁護士費用を支払い、新聞で公式の謝罪をすることを命じられた。
(Tuoi Tre news 2019年2月19日付記事参照)
【フィリピン:知的財産権局によるフェアユース啓蒙に対する取り組み】
フィリピンは1994年の著作権法改正において米国型のフェアユース規定が導入されており、以下の4つの視点から判断がなされている。
・利用目的及び性質(利用が商業性を有するか又は非営利的教育目的かという点も含む)
・著作権のある著作物の性質
・著作権のある著作物全体との関連における利用された部分の量及び実質性
・著作権のある著作物の潜在的市場又は価値に対する利用の影響
著作権は、文学的、芸術的又は科学的な分野で生み出された全ての作品の権利所有者を法律で保護することを意味する。具体的には書籍及びその他の著作物、音楽作品、映画、絵画、その他のビジュアルアート、建築デザイン、コンピュータープログラム、その他の文学的および芸術的作品が含まれる。
フィリピンでは著作物に対する法的保護は作品が生まれた瞬間に与えられ、著作権を保護するための登録は必要ない。しかし、これは著作権の利用がどれだけ公正に行われるかという問題をもたらす。なぜなら現代においてはデジタル化により、他人の著作物を容易に利用できるからだ。
フェアユースの概念は法律専門家の間では常識だが、多くの一般的なフィリピン人にはあまり理解されていないのが現状だ。そこでフィリピン知的財産権局はウェブサイト上で広く一般の理解を求めている。
(IPOPHL Webサイト 7月2日付記事参照)
【タイ:「より大きな予算を」知的財産の商業化促進のために提出された法案】
知的財産(IP)資産の商業化強化を目指し、タイは特許取得における人的資源の質を向上させるべきであると知財専門家は示唆している。
2019年の米国商工会議所のIP指数調査において調査対象となった50カ国のうち、タイは42位だった。「タイにとって最大の問題は特許弁理士の不足である。科学技術開発庁(NSTDA)の技術ライセンス局技術管理センターの上級IPコンサルタントであるOrakanoke Phanraksa氏は加えて「科学者、特許弁理士、製造業者の間では、ライセンス取得に関する知識と理解に不一致があることが多い」と報道陣に語った。
Orakanoke氏は、特許弁理士の育成により大きな予算を割り当てることを政府に対して求めた。
技術移転に関して提出された法案は、タイにおける知的財産資産の商業化の促進に役立つ。内閣によって可決された後に承認を得るため国務院に提出された。
「現在、政府出資の知的財産資産は、関連する政府機関と研究機関によって共同所有されている。本法案の下では、大学などの研究機関は知的財産資産の独自所有が可能になり、商業化過程をはるかに早めることができる」と彼女は説明した。
また、新政府は国の知的財産エコシステムの推進を継続すべきだと付け加えた。
米国商工会議所のGlobal Innovative Policy Centre(GIPC)の役員であるEllen Szymanski氏もOrakanoke氏に同意した。「我々はタイの知的財産エコシステムをさらに発展させるため、公的機関による継続的な努力を新政府に期待する。海外の投資家が知的財産に投資する際に最も重要視するのは政府が継続的に努力する姿勢を示しているか否かである」と彼女は述べた。
GIPCの2019年のIP指数は31.37%から32.22%へと上昇し、タイの知的財産体系の継続的な改善を示している。
上記を受け、「タイでは政府機関が知的財産問題にうまく対応できていることが見て取れる。しかし、知的財産資産の商品化の分野ではさらなる改善が必要である」とSzymanski氏は述べている。「強力な知的財産権保護の姿勢を取っている国内企業は、より多くのベンチャーキャピタル、海外及び民間からの投資を呼び込む可能性が高い」と彼女は述べ、「今後3〜5年の間に、公的機関がビジネス環境を改善するため知的財産規制改革を継続することを考えると、タイの知的財産体系は改善し続けていくだろう」と締めくくった。
(THE NATION 2019年3月25日付記事参照)
【マレーシア:著作権はアイディアの表現を保護する】
著作権は小説、記事、詩、演劇、コンピュータープログラム、映画、音楽、絵画等の創作物の作者に権利を提供する。
著作権はアイディアの表現を保護する。アイディアや事実を保護するものではない。
アイディアの表現とは、事実が文字、音楽、グラフィック又はその他の要素でどのように伝えられるかを意味する。
マレーシアでは、著作権は創作物が発表された際に自動的に取得される。著作権表示の例として、Copyright 2019 Dennis Tan及びCopyright 2019 Boon IPがある。前者は作者により主張される著作権表示を示し、後者は発行者による文書を示す。
マレーシアは、著作権保護のために任意の通知を提供している。
作者には経済的及び道徳的権利が与えられる。経済的権利とは、複製、商品化、改作などをする権利のことである。
道徳的権利とは、著作権を主張する権利と、作品の質の低下を防ぐ権利のことである。
作品の作者が認められるように、道徳的権利は作者、特にジャーナリストにとって重要である。
オリジナルの創作物は作家の生涯そして死後50年の間保護され、著作権期間が切れると創作物はパブリックドメインに分類される。
(Straits Times 2019年4月23日付記事参照)
【ベトナム:偽造書籍との闘いへのより高い意識の鍵は厳格な罰】
ベトナムにおける書籍偽造の問題は深刻である。コピーやスキャンによって露骨に偽造された偽造書籍がオンライン上に溢れている。オリジナルより安価で手に入るとなれば、海賊版を選ぶ消費者も少なくない。ベトナムにおいて、書籍は「公共の」資産であるという考えが根強く残っているため、消費者は違法コピーである偽造書籍を違和感なく受け入れている。
偽造書籍として最も危険だと考えられているのは、当局からの許可を全く得ずに出版されたもの又は当局によって登録及び承認された内容とは無関係の内容のものである。これらは慎重な推敲及び編集の過程を経ておらず、書籍の品質が保証されていない。よって、誤解を招く情報を掲載するかもしれず、読者の知識や考えに影響を及ぼす可能性がある。
また、印刷会社によって追加コピーされたものも大量に出回っている。勿論違法だが、オリジナルのおよそ半額で販売できるので需要も多く、この手の偽造書籍を販売する印刷会社が後を絶たない。これは知的財産権を侵害するだけでなく、出版社や作家が時間とリソースを使って上質な作品を生み出すことを妨げ、出版社の収益や利益に大きな影響を与えるだろう。ひいては出版業界全体を損なう可能性もある。
現在、偽造書籍の出版又は販売に関与した者は行政罰金のみで処罰されており、その金額は偽造書籍から得られる利益と比較してあまりにも低額である。罰金を支払ってもなお多額の利益が残るとなれば抑止力としては全くもって不十分である。
これらの行為は犯罪として処理されるべきであり、責任を問われた企業にはライセンスの取消など、厳しい処罰がなされるべきだ。また、偽造書籍の製造、販売、保管は偽造行為と同等の行為とみなされなければならない。情報保護機関は適切な措置を講じるため、問題のあるWebサイトを徹底的に監視及び調査する必要があり、裁判所はより適切な判決を下すようにせねばならない。また、報道機関は偽造品や偽造書籍に対する国民の意識を高めるように努めなければならないだろう。
(Viet Nam News 2019年7月1日付記事参照)